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月刊糖尿病2018年7月号 |
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A4変型判/96頁
価格:本体3,200円+税 ISBNコード:978-4-287-82106-0
全ページカラー印刷
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企画編集/野出孝一
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1997年に最初の哺乳類の時計遺伝子が発見されてから,概日時計(約24時間をはかる体内時計)の本体は時計遺伝子の発現振動であることが明らかにされてきた.4種類の時計遺伝子が中心的に機能してフィードバック回路を形成することでこの発現振動が細胞自律的に発生する.しかし,単一細胞レベルの時計は精巧ではないため,全身の細胞の時計のずれを修正するために,小さな神経核である視交叉上核がペースメーカーとして機能する.時計遺伝子の発見以降概日時計のメカニズムの理解は急速に進んできたが,“なぜ約24時間になるのか”“どのように自律振動を保つのか”“温度補償のメカニズムとは何か”などの核心的な部分は謎に包まれたままである.急速に室内照明が普及した結果,私たちは慢性的な時差ぼけを日常的に経験しており,多岐にわたる疾病のリスクを背負うようになった.概日時計研究の発展による貢献が期待される.
夜間交代制シフトワーク,夜更かし,夜食,朝食抜きといった不規則な生活をしたり,夜間に携帯やスマートフォンなどで光を浴びたりすると,睡眠障害も手伝い「体内時計」は撹乱し,血栓ができやすく溶解しづらい状態になり心筋梗塞発症につながりうる.若年期からすでに冠動脈硬化は進んでいることから,若年期から可能なかぎり規則正しい食生活を心がけるのがよいと思われる.心血管疾患既往のある者や高血圧や糖尿病などの危険因子(リスクファクター)をもつ者はできるだけ夜間交代制シフトワークを避け,夜は光を浴びることなく質のよい十分な睡眠をとり,朝日を浴び,朝食をとり,夜食をやめることで,生体に備わった「体内時計」の「概日リズム」を取り戻すことが好ましい.
心筋梗塞の発症が早朝に多いことは多くの研究から明らかである.早朝には交感神経系やレニン・アンジオテンシン系が活性化され血圧や心拍数が増し心収縮が亢進し酸素需要が増加する一方で,冠動脈の血管抵抗も上がるため冠血流は減少し酸素需要に見合うだけの供給がなされない.早朝は血小板凝集能が亢進し凝固因子活性も亢進する一方,線維素溶解(線溶)系は活性低下する.すなわち早朝に血栓ができやすくなる一方,できた血栓は溶解しにくい状態である.
心血管障害の抑制のための血糖管理は,平均血糖だけではなく,血糖変動の改善が必要である.またIGTの病態では,インスリン分泌の量的異常に加えて,インスリン分泌が後方にシフトすることによる食後高血糖や遷延性低血糖が起こることも知られている.
心血管イベントの発症にも日内・週内・季節変動がある.また,睡眠と生活習慣病の関連,分子レベルでの体内時計の役割や,インスリンが体内時計であるPER2の活性を変動させるという報告もある.量的な治療に加えて質的な治療を達成するためには,「時間」を軸とした生活習慣病治療を考える必要がある.本号では時間を考慮した糖代謝・循環器疾患治療という観点から,時計遺伝子と糖代謝・循環疾患とのかかわりといった基礎的側面と,血糖変動や時間を考えた運動薬物治療などの臨床的側面について,第一線の先生方にご執筆いただいた.本特集が読者にとって糖尿病治療の一助になれば幸いである.
野出孝一
(佐賀大学 医学部 循環器内科 教授)
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1. 概日時計と動脈硬化/明石 真,野出孝一
2. 生体時計と脂質代謝/榛葉繁紀
3. 時計遺伝子と糖代謝/太田康晴
4. 体内時計と栄養/田原 優
5. 睡眠改善による糖尿病治療/山田真介,稲葉雅章
6. 糖尿病合併高血圧の時間治療/ 藤村昭夫
7. 概日リズムを考慮した糖尿病予防と治療/沼野利佳
8. 時間を考慮した糖尿病運動療法/勝川史憲
9. 時間を考慮した糖尿病薬物療法/森 豊
10. 循環器疾患・糖尿病の時間治療/前村浩二
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