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月刊糖尿病 18年10月号
月刊糖尿病 115号(Vol.11 No.1, 2019)

A4変型判/96頁
価格:本体3,200円+税
ISBNコード:978-4-287-82112-1

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特集●妊娠糖尿病のクリニカルクエスチョン〜GDM完全理解までの12の質問〜

企画編集/清水一紀

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 糖尿病合併妊娠では児の流産や奇形が発生し,母体もケトアシドーシスや感染,腎合併症,眼合併症が急速に進行することが知られる.妊娠糖尿病においても,巨大児,新生児の黄疸,新生児低血糖,児の心筋肥大,新生児呼吸窮迫症候群などの頻度が高まる.近年,今まで各国で異なっていた妊娠糖尿病の基準を国際統一する目的でHAPO研究が行われ,その結果をもとに,国際糖尿病妊娠学会(IADPSG)が中心となり新たな妊娠糖尿病の診断基準が策定された.新基準においては,今まで妊娠中に発見された耐糖能異常(古い妊娠糖尿病の診断基準)は,軽度の耐糖能異常である妊娠糖尿病と,妊娠期の明らかな糖尿病に分けられた.新基準での妊娠糖尿病は軽度の耐糖能異常であるため,妊娠糖尿病と診断される妊婦は今までより増加している.新基準の妊娠糖尿病は,HAPO研究の解析では臍帯血のCペプチドで決定されたことから,胎児のインスリン分泌過剰な状態を反映する母体血糖値で決定されている.現在,この新基準を適用していない国も多いが,それは軽度の耐糖能異常が本当に問題なのかを見極めている時期だからである.そこでこの特集では,妊娠糖尿病におけるクリニカルクエスチョンを取り上げてみた.
 妊娠糖尿病の臨床上重要な点の1つに,将来の2型糖尿病予備軍であるということがある.言い換えると,肥満やインスリン抵抗性状態に陥いると耐糖能異常が起きやすい個体であることを示している.増え続ける糖尿病に対し,重点的に予防を啓蒙する対象として,妊娠糖尿病の既往を持つものは効率のよい候補である.対象が女性であることも重要で,自らが予防意識を持つことが,児の食育や家族の食習慣の改善につながる期待もできる.一方で社会的な少子化や晩婚晩産化によって,必然的に妊娠糖尿病の頻度は増し,周産期リスクはあっても正常分娩に至るよう介入する必要性も高まっている.
 妊娠糖尿病における母体の問題として,胎盤の異常やグルカゴン異常なども近年報告されている.インスリン抵抗性を合併する糖尿病の多くはheterogenousな集団である.妊娠糖尿病においても同様で,痩せの妊娠糖尿病と肥満妊娠糖尿病はさまざまな点で異なる.まれではあるが,多胎妊娠に伴う妊娠糖尿病や膵島関連自己抗体合併例も存在する.
 高血糖状態の妊娠では膵β細胞のFox01が蛋白分解を受け,膵β細胞はインスリン分泌能を失うとする報告もあり,ヒトにおいても妊娠出産が膵β細胞疲弊の原因になる可能性があるのかということも興味深い.また大きな問題として,妊娠糖尿病のフォローは現実には困難を極める.その結果,糖尿病への移行率なども報告によりさまざまである.ではどのように分娩後のフォローをしていけばよいのかということも大いなる疑問である.本特集では,妊娠糖尿病の持つ臨床上のクエスチョンを,経験豊富なさまざまな先生方にお答えいただいたため,解決に導く道を見出してもらえれば幸いである.

清水一紀
(心臓病センター榊原病院 糖尿病内科 部長)



1. 妊娠糖尿病のクリニカルシナリオ/杉山 隆
2. 妊娠糖尿病1点のみ異常は問題か/和栗雅子
3. 妊娠糖尿病と胎盤/有澤正義
4. 妊娠糖尿病と自己免疫/川﨑英二
5. 痩せの妊娠糖尿病の管理/清水一紀
6. 肥満を伴った妊娠糖尿病の管理/増山 寿
7. 妊娠糖尿病のインスリン分泌/中林 靖,中林正雄
8. 妊娠糖尿病のグルカゴン異常/鎌田昭江,堀江一郎,阿比留教生
9. 妊娠糖尿病と多胎妊娠/藤﨑 碧,児玉由紀,鮫島 浩
10. 妊娠糖尿病既往のある妊婦の管理/柳沢慶香
11. 妊娠糖尿病のフォローアップの実際/田中幹二,石原佳奈
12. 妊娠糖尿病既往女性の分娩後フォローアップの現状と課題/安日一郎