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月刊糖尿病 116号(Vol.11 No.2, 2019) |
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A4変型判/96頁
価格:本体3,200円+税
ISBNコード:978-4-287-82113-8
全ページカラー印刷
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企画編集/羽生春夫
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本邦では現在,認知症の患者数は約500万人と推定され,2025年には700万人に達するであろうと予測されている.とくに高齢のアルツハイマー病患者の増加が著しい.最近の研究から,生活習慣病は血管性認知症ばかりではなく,アルツハイマー病の発症や進行にも影響していることがわかってきた.したがって,まだ根本治療薬が登場していない現在,生活習慣病予防の観点から,アルツハイマー病の発症予防や進行抑制が可能となるのではないかと期待されている.とくに糖尿病とアルツハイマー病との間には「危険な関係」があり,糖尿病という観点から,新たな対応が期待できるかもしれない.
糖尿病や糖代謝異常がアルツハイマー病の発症リスクとなることは,多くの疫学研究で確認されているが,アルツハイマー病理をどのように促進し,修飾するのかについてはいまだ不明な点が多い.インスリン抵抗性やインスリンシグナル伝達の障害がアミロイドβやタウのリン酸化を含む病理学的変性過程を促進しているであろうことは十分に想像されるが,その他にも血管性病変や血液脳関門の障害,糖毒性に伴う酸化ストレスや終末糖化産物なども深くかかわっている.したがって,糖尿病による認知症の背景病理や病因は多様である.
臨床的にも,アルツハイマー病で糖尿病を伴う場合と伴わない場合とでは,神経心理所見や脳画像所見などを含む病態に相違がみられる.一方,血管性病変が認められず,アルツハイマー病理の関与も軽度な認知症を呈するサブグループがあり,この多くは糖尿病関連因子の関与が大きいことから「糖尿病性認知症」と呼ばれる.本症はアルツハイマー病とは異なる背景病理が示唆され,治療や経過も異なってくるため,適切な管理やケアのためには正確な診断や鑑別が求められる.
治療との関連についても,糖尿病治療薬の中にはアルツハイマー病理を修飾しうるものが一部あり,新たな認知症治療薬として期待されている.また,高齢の糖尿病患者はフレイルやサルコペニアを合併することが多く,糖尿病合併症としての認知症やフレイルには老年医学的対応が求められる.
最近,欧米諸国の一部では認知症患者が減少しているという.この背景には,教育歴の向上や生活習慣,生活習慣病への対策などが功を奏しているものと考えられる.本邦では今後も認知症患者が増加していくことが予想されるが,糖尿病の治療や予防によってアルツハイマー病を含む認知症患者数を減少できる可能性もあり,この視点から健康長寿社会の実現へ向けた対応が期待される.本特集では,糖尿病と認知症の「危険な関係」に焦点をあて,各分野の第一人者に最新の知見を解説していただいた.糖尿病診療に携わる多くの医師の明日からの診療に役立てていただければ幸いと考える.
羽生春夫
(東京医科大学 高齢総合医学分野 主任教授)
【月刊糖尿病 116号についてのお詫びと訂正】
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I 疫学
1. 糖尿病と認知症の疫学:久山町研究/二宮利治
II 病因・病態
1. アルツハイマー病理の促進機序/木村展之
2. 耐糖能異常とアミロイドβ産生/木下彩栄
3. インスリンシグナルからみたアルツハイマー病/池内 健
4. 糖尿病における酸化ストレスと中枢神経細胞障害/園田紀之
5. 糖代謝異常における脳血管病変と認知機能障害/鷲田和夫,猪原匡史
III 臨床・画像
1. 高齢者糖尿病における認知機能評価の重要性/荒木 厚
2. 糖尿病に伴う認知機能障害のMRI(脳画像)/田原嘉章
3. 糖尿病性認知症の臨床と病態/竹野下尚仁,羽生春夫
IV 治療・予防・ケア
1. 糖尿病治療薬による認知症治療/鈴木 亮
2. 糖尿病治療と認知症予防/杉本大貴,櫻井 孝
3. 糖尿病とサルコペニア・フレイルの関連/梅垣宏行
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