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月刊糖尿病 121号
月刊糖尿病122号(Vol.12 No.2, 2020)

A4変型判/88頁
価格:本体3,600円+税
ISBNコード:978-4-287-82119-0

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特集●糖尿病と睡眠・覚醒障害

企画編集/塩見利明

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 睡眠・覚醒障害(sleep-wake disorders)は,WHOの国際疾病分類第11版(ICD-11)で新たに独立した疾患(第7章)に分類された.内科領域で遭遇しやすい睡眠・覚醒障害の二大疾患は,不眠障害と睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing;SDB)である.この2つの睡眠・覚醒障害はとても身近な話題のため,習わなかったから気づかなかったでは,もう済まされない時代が到来している.まず,内科医は運動習慣と同様に睡眠習慣の獲得法についても早急に学ぶべきであろう.次に睡眠・覚醒障害とは何かを詳しく「知る」こと,また睡眠・覚醒障害を正しく「診る(診察する)」こと,そして睡眠・覚醒障害を適切に「治す」ことを,系統的に学び直すことから始めるべきである.
 24時間型社会とも呼ばれる現代では,インターネットや多様なメディアの普及,コンビニなど深夜営業の増加などにより,夜の光環境(LED照明など)が急激に変化している.睡眠不足の人や夜型(睡眠相後退型)の人が増え,老若男女を問わず,「現代は誰でも不眠になりうる時代(現代の不眠)」である.
 不眠や睡眠不足はともに夜間交感神経活性を亢進させるため,高血圧や糖尿病などの生活習慣病の一因になる.とくに睡眠不足は,レプチン低下またはグレリン上昇,もしくはオレキシン上昇を生じて肥満から糖尿病になるという学説(Knutson KL, 2008)が注目されている.
 睡眠医療が予防医学に果たす役割も少なくない.SDBのなかでも,とくに閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea;OSA)は肥満に伴う生活習慣病やメタボリックシンドロームと密接に関連し,高血圧,脂質異常,耐糖能異常を高率に合併するため,心血管病,脳卒中,慢性腎臓病を併発しやすいことが明らかとなってきた.夜間に増悪する心不全,不整脈,ならびに狭心症の背後にもSDBの存在が疑われる.糖尿病の背後にも潜むOSAについての正確な知識をできるだけ多くの医療関係者に広める必要がある.
 今回の特集「糖尿病と睡眠・覚醒障害」では,我が国のコホートスタディの代表的な研究からも糖尿病に関連した睡眠・覚醒障害の話題を紹介する.本特集が,日常の糖尿病診療において少しでもお役に立てれば幸いである.

塩見利明
(愛知医科大学 名誉教授)




1. 睡眠呼吸障害の診断分類(ICSD-3)/山城義広
2. 肥満と睡眠時無呼吸/篠邉龍二郎,塩見利明
3. 不眠・睡眠不足と糖尿病/小曽根基裕,瀧井 稔,内村直尚
4. 交替勤務と糖尿病/石塚達夫,藤岡 圭,池田貴英
5. 睡眠呼吸障害と循環器疾患/葛西隆敏
6. 腎透析患者の睡眠障害/小池茂文
7. ながはまコホートにおける睡眠障害/松本 健,陳 和夫
8. JEDAS研究における2型糖尿病と睡眠時無呼吸/田中俊一
9. 糖尿病網膜症と睡眠呼吸障害/柴 友明
10. 糖尿病性腎症(DKD)と睡眠障害/庄司繁市,稲葉雅章