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月刊糖尿病124号(Vol.12 No.4, 2020) |
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A4変型判/96頁
価格:本体3,600円+税
ISBNコード:978-4-287-82121-3
全ページカラー印刷
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企画編集/三五一憲
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糖尿病性神経障害は末梢神経疾患のなかで最も患者数が多く,また糖尿病の慢性合併症のなかで最も発症頻度が高い.運動神経,感覚神経,自律神経のすべてが侵されるが,症状として自覚しやすいのは感覚神経障害であり,疼痛やしびれなどの刺激症状が不眠や抑うつの原因となる場合もある.病期が進行すれば逆に感覚低下をきたし,潰瘍や壊疽などの重篤な足病変を招くこともまれではない.また自律神経障害は心血管系,消化器系,泌尿生殖器系をはじめとする多くの臓器機能に影響を及ぼし,患者のQOLを著しく低下させる.とくに心臓に分布する自律神経が高度に障害されると,重症不整脈や無痛性心筋梗塞などの生命予後にかかわる深刻な事態を引き起こす.糖尿病性神経障害の成因として,末梢神経系を構成するニューロン,シュワン細胞,血管内皮細胞の代謝異常(解糖系側副路代謝亢進,グリケーション,酸化ストレス・小胞体ストレスなど)や神経血流の低下が報告されており,各成因の間に密接なクロストークが存在することも示されている.しかしながら具体的な発症・増悪機構の究明は進んでおらず,アルドース還元酵素阻害薬(本邦のみ)や抗酸化薬α-リポ酸(ドイツのみ)を除いて,成因に基づいた治療薬の臨床応用には至っていない.そのため血糖管理による進行阻止と対症療法に依存せざるをえない状況が続いている.また糖尿病内科医の多くは神経系の診察に及び腰で,多忙な日常診療のなかで振動覚やアキレス腱反射などの簡便な検査ですら実施することが難しい状況である.神経内科医は神経障害の診断や重症度の判定はできるものの,有効な治療法がない現状では,その後のフォローを糖尿病内科医に委ねるケースがほとんどである.このような診療サイドの問題を改善していくために,糖尿病内科医と神経内科医のより密接な連携が不可欠である.
「もっと注目してほしい糖尿病性神経障害」という筆者の願いを込めて,本特集を企画した.この分野におけるエキスパートの先生方に,神経障害の疫学,病理,成因,診断,治療のエッセンスや,病態解明と治療法開発に向けた取り組みについて,わかりやすく解説していただいた.「糖尿病性神経障害を考える会」で議論し作成中の鑑別診断,病型分類,治療のフローチャートも,各担当の先生方にその経過報告をお願いした.本誌を手に取ってくださった方は,まずはご自身が興味をお持ちの章に目を通していただき,少しでも役立つ情報源としてご活用いただければ幸いである.
三五一憲
(東京都医学総合研究所 糖尿病性神経障害プロジェクト プロジェクトリーダー)
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1. 糖尿病性神経障害:オーバービュー/三澤園子
2. 糖尿病性神経障害の病理形態学/八木橋操六
3. 糖尿病性神経障害の成因:解糖系側副路代謝/水上浩哉
4. 糖尿病性神経障害の成因:グリケーション/赤嶺友代,西村理明,三五一憲
5. 糖尿病性神経障害の成因:酸化ストレス・小胞体ストレス/加藤宏一
6. 糖尿病性神経障害の成因:血管障害/竹下幸男,神田 隆
7. 糖尿病性神経障害の症候学/鈴木千恵子
8. 有痛性糖尿病性神経障害の病態と対策/真田 充
9. 糖尿病性自律神経障害の病態と対策〜心血管自律神経障害を中心に〜/麻生好正,加瀬正人
10. 糖尿病性神経障害の鑑別診断/野寺裕之
11. 糖尿病性神経障害の病期・病型分類/出口尚寿,西尾善彦
12. 糖尿病性神経障害の一般的治療/岸本祥平,佐々木秀行
13. 糖尿病性神経障害の新たな診断・治療法/柴田由加,神谷英紀,中村二郎
14. 糖尿病性神経障害に対する再生医療の試み/成瀬桂子
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