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月刊糖尿病 126号
月刊糖尿病127号(Vol.12 No.7, 2020)

A4変型判/80頁
価格:本体3,600円+税
ISBNコード:978-4-287-82124-4

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特集●●インスリン分泌機構とその異常

企画編集/金藤秀明

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 膵β細胞は,通常は少量の基礎インスリンを分泌し,食後などで高血糖に曝されると適切な量の追加インスリンを分泌することによって,血糖値を正常化する非常に優れた細胞である.また,食後には小腸からインクレチンが分泌され,膵β細胞に作用して,グルコース応答性インスリンを促す.こうしたインスリンやインクレチンのおかげで,健常者の血糖値は正常範囲に保たれている.糖尿病状態ではインクレチン効果が低下するため,現在では非常に多くのインクレチン関連製剤が実臨床で使用されている.糖尿病の発症から病態進展の経過をみると,インスリン抵抗性が惹起された糖尿病発症時の肥満などによる脂肪毒性が膵β細胞機能障害を引き起こし,その後続く慢性高血糖によるブドウ糖毒性によりインスリン分泌はさらに低下し,高血糖の遷延化や重症化を招く.こうした観点から,食事療法や運動療法にて良好な血糖コントロールが得られない場合は,糖尿病治療薬やインスリン製剤を病態の早期から用いることが望ましい.インスリン分泌機構,さらに糖尿病状態における膵β細胞機能異常に関して,次々と新しいメカニズムが解明されている.本特集ではインスリン分泌機構および糖尿病状態における膵β細胞機能異常に関して,第一人者の先生方から最新の知見をご解説いただいた.
 1型糖尿病においては自己免疫異常などを介した膵β細胞破壊が原因と考えられており,治療としては最初からインスリン療法を行う.発症の速度によって劇症1型糖尿病,急性発症1型糖尿病,緩徐進行型1型糖尿病に分類されている.本特集では1型糖尿病の第一人者の先生方からも最新の知見をご解説いただいた.2型糖尿病においては肝臓,脂肪,骨格筋などのインスリン標的臓器でのインスリン抵抗性と膵β細胞の機能低下が二大特徴である.また,欧米人に比べると日本人の2型糖尿病においてはインスリン分泌不足が原因になっていることが多い.欧米人に比べて日本人の膵β細胞は遺伝的な理由から脆弱であるため,日本人が欧米食を多く摂取すると,比較的容易に膵β細胞機能が低下する.こうしたことから,とくに日本人の糖尿病の発症,進展,予防,治療などを考える際に,膵β細胞は非常に重要である.なんらかの機序で膵β細胞機能が悪化すると高血糖になり,それが長期化すると最終的には,網膜症,腎症,神経障害などの細小血管障害,さらに虚血性心疾患,脳梗塞,下肢の閉塞性動脈硬化症などの大血管障害などにつながる.さらに糖尿病を有していると認知症や悪性腫瘍が増加することも知られている.
 本特集では,膵β細胞研究に携わってこられた第一人者の先生方から最新の知見やお考えをご解説いただいた.糖尿病の診療あるいは研究に携わっておられる多くの先生にお役立ていただければ大変幸いである.


金藤秀明
(川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授)




1. 膵β細胞からのインスリン分泌/駒津光久
2. インスリン開口放出のメカニズム/高橋倫子
3. 2相性インスリン分泌のメカニズム/青柳共太,今泉美佳
4. 膵β細胞量調整の分子機構/奥山朋子,白川 純,寺内康夫
5. 膵β細胞ブドウ糖毒性の分子機構/金藤秀明
6. 時計遺伝子とインスリン分泌異常について/田口昭彦,谷澤幸生
7. 膵β細胞との臓器間ネットワーク/山本淳平,今井淳太,片桐秀樹
8. グルカゴン分泌異常/北村忠弘
9. 1型糖尿病/馬場谷 成,池上博司
10. 劇症1型糖尿病/佐野寛行,今川彰久