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月刊糖尿病 126号
月刊糖尿病133号(Vol.13 No.5 2021)

A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-82130-5

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特集●心腎連関から考える2型糖尿病の治療戦略〜SGLT2阻害薬を中心に〜

企画編集/東條克能

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 医学は専門分化を進めることで目覚ましい進歩を遂げてきたが,一方で,疾病を全体として捉え,生体内の臓器を複眼的な視点から捉え,疾病の全体像を考察することの重要性が強調されるようになった.この流れは脳と腸,腸と肝臓など種々の臓器連関が発見され,こうした臓器間のメッセージのやりとりが生体の恒常性を維持することから当然の帰結であった.さまざまな臓器連関のなかでも全身を巡る血液の恒常性維持に関与する腎臓と,その運搬に関与する心臓の連関は臨床上の知見として早くから注目を集め,心腎症候群と呼ばれるようになった.とくに全身の血管病である2 型糖尿病では,心血管系合併症の発症・進展における病態基盤として早くから心腎連関の重要性が認識されている.糖尿病性腎症において,GFRの低下は心不全のリスクとなり,微量アルブミン尿が動脈硬化を惹起することなどが知られており,糖尿病の治療においてはこうした心腎連関をいかに断ち切ることができるかが重要となる.
 2型糖尿病における心腎連関には,従来よりインスリン抵抗性とレニン・アンジオテンシン系(RAS)が血管の炎症および動脈硬化の進展に深く関与することが知られている.交感神経系の病態的意義も重要で,心不全では遠心性に腎交感神経が活性化されて腎血流の低下を招き,逆に腎神経の活性化は,尿細管におけるナトリウム再吸収を増加させて体内へのナトリウム貯留を生じ,さらに心不全を悪化させることが明らかになっている.
 近年,SGLT2阻害薬が心・腎機能障害患者の予後を改善するとの報告が相次いでいる.米国では2019年版の糖尿病診療ガイドラインにおいて,腎機能保護と心血管イベント予防にSGLT2阻害薬が推奨された.SGLT2阻害薬の心不全・腎臓病への適応拡大を目指した研究も進むなど新たな展開をみせている.このSGLT2阻害薬の登場によってミトコンドリアが豊富に存在する心臓・腎臓のエネルギー代謝面での共通性に着目した研究をはじめ,腸内細菌叢との関連,腎臓局所内での臓器連関など心腎連関に関するきわめて斬新な報告が相次いでいる.以上のように,心腎連関に関する最新の知見が集積しつつある現状を踏まえ,2型糖尿病に対する治療戦略を心腎連関の観点から改めて考えることは時宜を得たものと考えられ,この領域で先進的な研究を進めておられる先生方にご執筆いただいた.
 最後に,大変ご多忙のなかご執筆いただいた先生方に感謝申し上げるとともに,本特集が明日からの臨床に役立つことを願うものである.

東條克能
(東京慈恵会医科大学 客員教授,慈恵看護専門学校 学校長)



1. 糖尿病における心腎連関〜そのKey Playerは?〜/加藤 徹,野出孝一
2. 心腎連関におけるRASの関与とSGLT2阻害薬/西山 成
3. インスリン抵抗性と心腎連関/田辺隼人,島袋充生
4. 心腎連関に影響を与える,中枢と末梢の交感神経活動亢進/
熊谷裕生,大島直紀,今給黎敏彦,山城 葵,田之上桂子,後藤洋康
5. 体液調節異常から考える心腎連関/増田貴博,長田太助
6. 血管内皮機能障害と心腎連関/東 幸仁
7. エネルギー代謝から考える心腎連関/久米真司
8. 高尿酸血症と心腎連関/益崎裕章,本間健一郎,照屋大輝
9. 炎症と心腎連関/田中君枝,佐田政隆
10. 心腎連関から考える心不全治療/坂東泰子
11. 腸内細菌叢と心腎連関/菊地晃一,阿部高明
12. 尿細管糸球体連関/長谷川一宏