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月刊糖尿病 126号
月刊糖尿病137号(Vol.13 No.9 2021)

A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-82134-3

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特集●糖尿病診療における運動・身体活動

企画編集/勝川史憲

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 糖尿病治療において運動療法の重要性は明らかだが,その指導やフィードバックに関して,実際の臨床では課題も多い.今日,糖尿病診療における運動・身体活動の目的は,糖尿病の重症化・発症予防にとどまらない.目の前の患者は,肥満や他の生活習慣病など,それぞれ異なる運動の要件を必要とする疾患を合併していることが多く,高齢患者では,フレイル予防の観点からの運動指導も重要となる.こうした状況に伴って,運動処方は,従来の中強度運動を主体とするものから,強度が異なる他の有酸素運動・生活活動やレジスタンス運動(筋力トレーニング)・バランス運動を含む多様なものに変化している.
 糖尿病や合併する病態に関する知見は,運動処方の変化を上回って進展している.これらの基礎的知見を踏まえて,運動療法の概念・処方の修正・革新を図ることは,今後も必要だろう.本特集は,前半で運動の背景となる基礎的なテーマを扱い,後半で,運動療法の実際について取り上げる.
 前半ではまず,運動・身体活動の定義を踏まえて,糖尿病患者の身体活動の現状を理解する.次いで,血糖コントロールに寄与する体重変化を運動が規定する因子として,24時間のエネルギー基質の出納,食欲を介したエネルギー出納への影響について学び,運動が減量に貢献する機序の理解を進める.さらに,糖尿病が骨格筋量減少を合併する機序,マイオカイン研究の現状と展望など,運動に関連する糖尿病の病態に関する基礎研究の最新の知見をご紹介いただく.
 後半は,運動療法の臨床的な話題にフォーカスする.運動療法はその有用性に目が向くが,リスク管理としての開始時のメディカルチェックの理解も重要である.次に,肥満や他の生活習慣病の合併例におけるエビデンスに基づく運動療法の進め方について理解する.また,積極的に取り組む施設がまだ少ない腎症を有する患者のリハビリテーションや,高齢糖尿病患者のフレイル予防のための運動療法の実際についてご解説いただくこととした.最後に,運動は長期に継続してこそ効果を発揮する.そこで,運動・身体活動の実践・継続にかかわる心理学的・行動経済学的アプローチの理論と実際を学ぶ.
 「運動療法」という言葉では必ずしもくくりきれない,運動・身体活動科学の基礎研究や実践面の知見の集積の一端を本特集で共有し,日々進歩する糖尿病診療に貢献できれば幸いである.

勝川史憲
(慶應義塾大学 スポーツ医学研究センター 教授)

1. 運動・身体活動と糖尿病/田中茂穂
2. 運動がエネルギー基質利用に及ぼす影響の理論と実際/岩山海渡,徳山薫平
3. 運動による食欲コントロール〜食・動・脳連関〜/吉川貴仁
4. 糖尿病とサルコペニア〜分子メカニズムを含めて〜/平田 悠,小川 渉
5. マイオカインと骨格筋分子生物学/藤井宣晴,眞鍋康子,古市泰郎
6. 運動療法開始時のメディカルチェック/河合俊英
7. 体重コントロールに向けた運動療法の実際/中田由夫
8. メタボリックシンドローム合併糖尿病患者の運動療法/細井雅之,薬師寺洋介,元山宏華
9. 糖尿病性腎臓病のリハビリテーション・運動療法/上月正博
10. 糖尿病患者のフレイル予防のための運動療法/野村卓生,近藤 寛
11. 運動における動機づけの理論と実践/松本裕史