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月刊糖尿病 126号
月刊糖尿病140号(Vol.13 No.12 2021)

A4変型判/80頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-82137-4

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特集●経口血糖降下薬の温故知新

企画編集/駒津光久

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 今から約100年前に糖尿病の“特効薬”として登場したインスリンがさまざまな進化を遂げ多くの糖尿病患者に福音をもたらしている.一方,多くの2型糖尿病患者では経口血糖降下薬の進歩でインスリン投与なしで良好な血糖コントロールが可能な時代となっていることはまさに隔世の感である.
 1956年,SU薬であるトルブタミドの上市は初めての経口血糖降下薬として注目を集め,数年後にビグアナイド系としてフェンホルミン,ブホルミン,さらにメトホルミンが用いられるようになり新たな糖尿病薬物治療の時代が始まった.フェンホルミンは乳酸アシドーシスのリスクが高く市場から消え,現在ではメトホルミンが主に使用されている.トルブタミドは,のちに多くの批判を招いたUDGP研究でインスリンに比べ心血管イベントが多いとされ,UKPDS研究が発表されるまでは,他に選択肢がないために仕方なく使用され続けているような状況であった.現在,SU薬はCAROLINA試験において心血管イベントや認知機能に対する中立性が証明され,ついに正当な評価を受けるに至った.メトホルミンもUKPDSで確固たるエビデンスが確立され,今や海外では第一選択と位置づけられている.このように経口血糖降下薬は60年以上前に開発された製剤がいまだに重要なポジショニングを得ている.
 1990年代以降α-GI,チアゾリジン薬,グリニド薬と矢継ぎ早に新薬が登場し,それぞれの特徴を発揮し新たな経口血糖降下薬としてのポジショニングを築いてきた.2009年末に発売されたシタグリプチンを皮切りに一連のDPP-4阻害薬の登場は2型糖尿病の薬物療法を一変させ,その安全性や心血管イベントへの中立性も証明され,広く用いられている.そして,2014年から発売された一連のSGLT2阻害薬は大きく糖尿病の薬物療法を進化させた.当初,その安全性に関して慎重な対応がとられていたが,EMPA-REG OUTCOME試験がゲームチェンジャーとなり,各種SGLT2阻害薬による心血管イベント抑制効果,心不全の悪化抑制,腎に対する保護効果など,当初の予想をはるかに超えたエビデンスが積み上がり,使用上の注意点はあるものの主要な経口血糖降下薬へと躍進した.2021年には,注射薬としてエビデンスを蓄積していたGLP-1受容体作動薬に経口投与が可能となった経口セマグルチドが上市され,今後のキープレーヤーになると期待されている.メトホルミンの構造を変えることで新たな血糖降下作用を有するイメグリミンも上市され,経口血糖降下薬は新旧交えた百花繚乱の様相である.
 本特集では,それぞれの経口血糖降下薬について特徴や使用法,エビデンスなどを,その分野の専門家にご解説いただくことにより,経口血糖降下薬の温故知新をふまえ個別化治療に役立つことを願っている.さらに,海外で提唱されている2型糖尿病患者への薬物治療アルゴリズムの解説や経口血糖降下薬に関するエビデンスに対する正しい向き合い方に関しても解説していただく.

駒津光久
(信州大学 医学部 内科学第四教室 糖尿病・内分泌代謝内科 教授)

1.スルホニルウレア薬〜エビデンスを正しく知って活用しよう〜/古川慎哉,三宅映己
2.ビグアナイド薬〜消化管作用を含めた新規の知見〜/森田靖子,小川 渉
3.α-グルコシダーゼ阻害薬〜知っておきたい本薬の効果〜/田中 逸
4.チアゾリジン薬〜“クセモノ”薬の活用術〜/大森一生,八木稔人
5.グリニド薬〜いま改めてその力に着目する〜/鴫山文華,弘世貴久
6.DPP-4阻害薬〜DPP-4の正体はT細胞表面抗原CD26だった〜/麻生好正
7.SGLT-2阻害薬〜期待を超えるイノベーター〜/鈴木 亮
8.経口GLP-1受容体作動薬〜胃粘膜から吸収されるGLP-1受容体作動薬〜
  /窪田創大,加藤丈博,水野正巳,矢部大介
9.イメグリミン〜ミトコンドリア機能を改善する経口糖尿病薬〜/野村政壽,蓮澤奈央
10.経口血糖降下薬の配合剤をどのように活かすか/北澤 公
11.ADA/EASD合同ステートメントの高血糖管理アルゴリズムについて/住谷 哲