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月刊糖尿病141号(Vol.14 No.1 2022) |
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A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%) ISBNコード:978-4-287-82138-1
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企画編集/阪上 浩
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脂肪組織は白色脂肪細胞を主人にもつ.この主人は中性脂肪を脂肪滴という特有の細胞内器官に存分に貯め込む.しかし一旦全身がエネルギーを必要とするや否や,中性脂肪をすみやかにグリセロールと脂肪酸に分解して全身に供給するのだが,この脂肪の分解を抑制するためのインスリンの作用はとても低濃度から発揮される.すなわち白色脂肪細胞は可能な限りエネルギーを中性脂肪として蓄積し維持するための分子機構を備えているようであり,この脂肪組織のおかげで我々人類は飢餓の時代を乗り越えられてきたと考えられる.とくに内臓周囲の脂肪組織は直接的に肝臓にグリセロールとともに脂肪酸を供給し,脂肪酸はβ酸化によってアセチルCoAを生成しATP産生に使われるのだが,さらに肝臓は,脂肪酸からケトン体を合成し,脳へと供給してアセチルCoAへと変化させて神経細胞のエネルギー源とさせる.
このような脂肪組織とエネルギー蓄積・供給の関係は,過栄養や運動不足という現代社会においては,内臓脂肪組織への脂肪過剰蓄積という糖尿病や動脈硬化の共通基盤として基本概念,すなわち「メタボリックシンドローム」として松澤佑次大阪大学名誉教授らによって提唱されたのだが,当時きわめて先駆的な考えであった.一方で,自身に脂肪も蓄えながら,必要な時に迅速にβ酸化によって得たアセチルCoAを利用して熱を産生する褐色脂肪組織の存在も斉藤昌之北海道大学名誉教授らによってヒトにおいてもその存在が明らかとされ,さらには白色脂肪組織においてさえも,必要に応じて出現し熱を産生するベージュ脂肪細胞が存在することも明らかとされた.
では一体何故,「内臓脂肪組織への脂肪過剰蓄積」が糖尿病などの生活習慣病を起こすのか,また実際,熱を産生する褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞を活性化させることで生活習慣病が改善させられるのか,基礎研究とともに臨床研究や疫学調査が車の両輪のごとく実施され,その分子機構が解明されて臨床応用への道筋ができてきた.その研究での大きな成果の1つが脂肪細胞特異的に分泌する生理活性物質,アディポサイトカインの発見である.編者は幸運にも,次々に発見されるアディポサイトカインの作用を研究の現場で直接的に観察する機会を得た.表現は難しいのだが,化学療法剤のようなものをマウスに投与したときのダメージとしての摂食抑制や血糖値の低下ではなく,健康で元気で走り回るマウスの表現型として,レプチンによる摂食抑制やアディポネクチンのインスリン抵抗性改善作用を目の当たりにして,当時とても感動したのを今も鮮明に覚えている.
さて,日進月歩で膨大な数の新しい知見やエビデンスが集積される糖尿病研究において,脂肪細胞・アディポサイトカインと糖尿病に関してUp-Dateするために本稿を企画させていただいた.研究のみでなく臨床の最前線で活躍されている読者の皆様にも,現時点での研究内容が欠けることなく,わかりやすく解説する紙面になってくれれば,明日からの臨床にも役立つものになるに違いない.最後に,大変ご多忙のなかご無理を言って編者の意図をくみ取ってご執筆いただいた先生方にこの場を借りて感謝申し上げる次第である.
阪上 浩
(徳島大学大学院 医歯薬学研究部 代謝栄養学分野 教授)
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Ⅰ.脂肪細胞と糖尿病
1.脂肪細胞機能不全と糖尿病/細岡哲也,小川 渉
2.脂肪組織炎症と糖尿病/戸邉一之,瀧川章子,アラーナワズ,角 朝信,藤坂志帆
3.脂肪細胞のエピジェネティック修飾と糖尿病/脇 裕典,山内敏正
4.褐色脂肪細胞と糖尿病/黒田雅士,堤 理恵,阪上 浩
Ⅱ.アディポサイトカインと糖尿病
1.アディポネクチンと2型糖尿病/岩部真人,岩部美紀,山内敏正
2.レプチンと2型糖尿病/日下部 徹
3.アディポサイトカインと1型糖尿病/石垣 泰
4.脂肪細胞由来non-coding RNA,エクソソームと糖尿病/喜多俊文
Ⅲ.脂肪細胞を含む多臓器ネットワークと糖尿病
1.NALFD/NASHと糖尿病/中司敦子,和田 淳
2.腸内環境と糖尿病/菊地理恵子,入江潤一郎
3.膵β細胞における脂肪酸シグナルと糖尿病/島袋充生
4.アディポサイトカインとメタボリックシンドローム〜アディポネクチンによる
メタボリックシンドロームの発症リスク予測〜/船木真理
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