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月刊糖尿病 144号
月刊糖尿病144号(Vol.14 No.4 2022)

A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-82141-1

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特集●糖尿病患者に忍び寄る骨折リスクとその対応

企画編集/今西康雄

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 各種併存疾患の合併により骨折リスクが増大することが知られている.とくに2型糖尿病や慢性腎臓病,慢性閉塞性肺疾患などの生活習慣病においては,骨密度とは独立した骨折リスクである骨質の低下が示唆されている.骨質とは,骨密度以外の骨脆弱性に関連した事象の総和とも言い換えることができ,骨微細構造・骨代謝回転・微小骨折・石灰化状態といった,骨密度で評価できない骨強度の指標である.2000年のNIHコンセンサス会議においては,骨粗鬆症が再定義され,「骨粗鬆症とは,骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患,A skeletal disorder characterized by compromised bone strength predisposing to an increased risk of fracture」と謳われた.さらに「骨強度は骨密度と骨質の2要因からなり,骨密度は骨強度の70 %を,骨質は30 %に影響する.」とも説明されている.
 骨質の1つの要素として,骨コラーゲン架橋の異常が報告されている.生理的な環境で作られる善玉架橋と,病的環境下で合成される悪玉架橋の両者で,骨脆弱性が規定される.海綿骨スコア(TBS)は,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)の画像を用いた指標で,各画素の濃度変動(ばらつき)を用いて骨微細構造を解析し,骨強度を評価する.HR-pQCT(高解像度末梢骨用定量的CT)は,非侵襲的に生体の骨微細構造を解析することで,皮質骨多孔性などの評価が可能である.
 糖尿病の合併症として,糖尿病性腎症や糖尿病性網膜症,糖尿病性神経障害が生じる.糖尿病性腎症による腎機能低下により骨質がさらに劣化し,糖尿病性網膜症,糖尿病性神経障害により転倒リスクが増大する.また,フレイル・サルコペニアも重大な合併症であると,近年認識されるようになった.このような状態になると,転倒リスクを正しく評価し,転倒防止対策を講じることで,骨折リスクの減少に努める必要が生じる.
 糖尿病も骨粗鬆症も食事療法の重要性が高いが,糖尿病性骨症における食事療法や指導法についても,実地的な視点からみた指導が重要である.さらに糖尿病性骨症の薬物治療であるが,糖代謝と骨代謝両面から考えておく必要がある.また,糖尿病性骨症の診療は,医師のみで完結するものではない.骨粗鬆症マネージャーや糖尿病療養指導士が,どのように患者とかかわるべきか,重要な課題である.
 本号においては,これらのトピックスを最前線で診療・研究に当たられている先生方からご解説いただく.本号が日常臨床のレベルアップに寄与することを,切に希望したい.

今西康雄
(大阪公立大学大学院 医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授)

1.糖尿病性骨症の疫学/笹子敬洋,植木浩二郎,門脇 孝
2.糖尿病性骨症におけるDXA評価/山本昌弘
3.糖尿病性骨症における骨質劣化機序/斎藤 充
4.糖尿病性骨症における皮質骨劣化機序/千葉 恒,尾崎 誠
5.糖尿病性腎症におけるビタミンD代謝異常/山形雅代
8.糖尿病性腎症における骨脆弱性とその対策/中川洋佑,駒場大峰
7.フレイル・サルコペニアと糖尿病性骨症/元山宏華
8.糖尿病性神経障害と転倒リスク評価/細井雅之,元山宏華
9.糖尿病患者における転倒防止対策/櫻井真由美,大野良晃
10.糖尿病性骨症における栄養指導/中川公恵
11.糖尿病性骨症の治療/井上玲子,井上大輔
12.骨粗鬆症マネージャーと糖尿病療養指導士の役割/鈴木敦詞