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月刊糖尿病149号(Vol.15 No.2 2023) |
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A4変型判/80頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%) ISBNコード:978-4-287-82146-6
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企画編集/杉山 隆
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糖代謝異常合併妊娠は妊娠中の合併症のなかでは最も頻度が高い疾患です.インスリン分泌が低い我が国ゆえの背景や晩産化に加え,近年の生活習慣も糖代謝異常の増加の一因となっていると考えられています.
妊娠糖尿病の診断基準が変更され,すでに10年以上が経過しました.ただし,我が国で現在使用している診断基準は,国際糖尿病・妊娠学会(IADPSG)が推奨する妊娠糖尿病の診断基準とは異なっています.その理由は,我が国の2000年ごろは妊娠糖尿病のスクリーニングが徹底されておらず,妊娠初期に未診断糖尿病や糖尿病に至っていないような糖代謝異常を見つける体制が整っておらず,あえて妊娠全期間,同じ診断基準を用いてきた経緯があります.現在,妊娠初期・中期において公費負担による耐糖能スクリーニングは徹底されるようになり,今後の管理の方向性について再考する必要があります.妊娠前半期における糖尿病に至っていない耐糖能異常の取り扱いについては,いまだ世界的にもはっきりしておらず,このような視点より,妊娠糖尿病に対する最新の知見を特集として組んだ次第です.
一方,糖尿病合併妊娠もその管理においては依然悩ましい点があります.たとえば,2型糖尿病女性の計画妊娠がしっかりなされていない点や肥満が多いことにより,肥満そのものの妊娠への悪影響も大きいことがあげられます.1型糖尿病女性のBMI上昇傾向に加え,晩産化も妊娠高血圧症候群のリスクを上げる原因となります.一方,血糖コントロールのための各種ディバイスの開発の進歩により管理法のオプションも増え,ICTの進歩,食事療法や看護的支援,エンパワーメント,さらにはレコンセプションケアも糖尿病女性のみならず妊娠糖尿病女性に対する有効性が期待されます.
また,子宮内環境が高血糖という一種の過栄養環境は出生後の児の長期的に悪影響を及ぼす可能性も疫学研究で明らかになっています.動物実験では,とくに子宮内環境の是正が有効であることを示唆する報告がある一方,出生後の継続的な生活習慣も重要であることも示唆されています.子宮内環境の児へのエピジェネティックな影響があることは確実ですが,管理法については依然不明です.このような背景下,今後,糖代謝異常合併妊娠の管理に関し,母体のみならず次世代の健康も見据えた妊娠前からのプレコンセプションケアは重要であり,今後さらに進む少子超高齢化時代に向けた成育医療の原点にも通じる重要な領域であると考えます.
本特集では,本領域に造詣の深い先生方に原稿をお願いしています.読者の皆さんにとって本書が臨床現場で役に立てば望外の幸せです.
杉山 隆
(愛媛大学大学院 医学系研究科 産科婦人科学 教授)
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1.妊娠糖尿病に関する周産期予後と管理のエビデンスについて/岩間憲之,齋藤昌利,杉山 隆
2.妊娠初期に診断される妊娠糖尿病の妊娠予後/中西沙由理
3.妊娠糖尿病:管理のポイントと課題/宮越 敬
4.妊娠糖尿病のフォローアップ/川﨑麻紀,荒田尚子
5.我が国における1型糖尿病と2型糖尿病の疫学/藤川 慧
6.糖尿病合併妊娠に対する食事療法とインスリン療法/黒田暁生,松久宗英
7.糖尿病治療におけるICT/IoTを用いた支援/萩原郁哉,脇 嘉代
8.糖代謝異常合併妊娠に対する看護支援/田中佳代
9.糖尿病女性,妊娠糖尿病既往女性に対するプレコンセプションケア/荒田尚子,川﨑麻紀
10.エピジェネティクスの視点からみた糖代謝異常女性に対する管理:今後の展望/春日義史
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