|
|
月刊糖尿病 別冊 糖尿病治療薬ハンドブック |
|
2011年9月21日発売
A4変型判/224頁 価格:本体6,600円+税
ISBNコード:978-4-287-82902-8
全ページカラー印刷
|
|
企画編集/河盛隆造
順天堂大学大学院 医学研究科 代謝内分泌学 特任教授,
(文科省事業)スポートロジーセンター センター長 |
|
|
|
画像をクリックするとサンプルをご覧いただけます |
|
|
巻頭言:糖尿病の所期目標は?
2型糖尿病治療の所期目標は,動脈硬化性疾患の発症阻止にある.そのためには,発症早期から,あるいは発症前から完全に血糖値を正常状態に戻すことが必要と捉えられはじめている.健常人においても,運動や食事といった外乱に応答して,血糖値は刻々と変動している.血糖値は,全身でグルコースがいかに処理されているかを反映しているため,血糖応答状況から“糖のながれ”や“インスリンのながれ”の状況を的確に把握すべきと筆者は捉えている.
2型糖尿病の発症機序は1例1例で異なり,かつ各時点で病態は刻々と変動するため,病態生理を正しく読み取り,血糖値を是正する最適な手段を駆使し,さらに相乗効果が認められるような併用療法を考えて実践すべきであろう.
2型糖尿病の治療において,食事・運動療法を施しても血糖応答が是正されないときには,薬物療法にて,良好な血糖応答状況を維持すべきであろう.筆者は,糖尿病に対する薬物療法を以下の7種に大別している.(1)内因性分泌インスリンの働きを高める薬:メトホルミンやピオグリタゾン,(2)糖質分解阻害,グルコース吸収遅延薬:α-グルコシダーゼ阻害薬,(3)インスリン分泌パターン改善薬:グリニド薬,(4)インスリン分泌刺激薬:SU薬,(5)腸管ホルモン,GIPやGLP-1の血中濃度を保ってそのインスリン分泌促進・グルカゴン分泌抑制作用を介して血糖応答を改善するDPP-4阻害薬,(6)外来性にGLP-1を補充する,あるいはGLP-1 受容体を刺激する注射薬,(7)インスリン製剤,である.
2型糖尿病の治療方針は,(1)内因性インスリン分泌の回復を図ること,(2)たとえそれが十分量でなくてもインスリン感受性を亢進させて良好な血糖応答状況を維持すること,(3)肝臓に直接的にインスリンを供給するというtargetingを満たすことが必須であるため,積極的に薬物療法を駆使し,正常血糖応答を維持することが求められている.1剤で目標とする血糖応答状況に到達しないときには,作用の異なる他の1 剤を追加し,その効果が1+1=3,あるいは3剤で1+1+1=6,となるようにベストパートナーを選択すべきであろう.
近年,新たな作用機序を持つインクレチン関連薬に注目が集まっている.筆者がこれらの薬剤に期待する点は,(1)膵ラ氏島内において,インスリンとグルカゴンのバランスを改善し,門脈内でのグルコース,インスリン,グルカゴンのカクテルの配合比率を改善することによって肝臓での糖処理を高め,食前・食後の血糖応答を改善すること,(2)膵β細胞機能の回復や細胞数の増大をもたらす可能性があること,(3)直接的に糖尿病の宿命,動脈硬化症の発症・進展を防ぐ可能性があることである.
また2型糖尿病のインスリン療法では,内因性インスリン分泌量が不足している時間帯に,足りない量を十分に補うべきであろう.しかし,現在のインスリン療法は,皮下組織,あるいは末梢静脈内にインスリンを投与せざるをえない.このとき,決して健常人でみられる“糖のながれ”を再現してはいないことを認識しておくべきである.すなわち,インスリン注射療法の目標は,単に血糖値を良好に維持するのみでなく,“糖毒性”を解除してインクレチンやグルコースによるインスリン分泌を回復させることにあると考えたい.
薬物を的確に選択し,その効果を緻密に把握する外来診療を実践したい.
|
|
|
|
I.糖尿病治療薬としての作用機序と特性,付加価値
1.α-グルコシダーゼ阻害薬/加来浩平 他
2.メトホルミン/益崎裕章 他
3.ピオグリタゾン / 山内敏正 他
4.DPP-4阻害薬/金藤秀明 他
5.グリニド薬/森 豊
6.SU薬/谷澤幸生 他
7.GLP-1受容体作動薬/稲垣暢也 他
8.インスリン/綿田裕孝 他
II.どのような薬剤をpartnerに選ぶか,その理由は,効果は,さらに3剤目は
1.α-グルコシダーゼ阻害薬/山田祐一郎 他
2.メトホルミン/前川 聡
3.ピオグリタゾン/寺内康夫 他
4.DPP-4阻害薬/岩本安彦
5.グリニド薬/荒木栄一 他
6.SU薬/佐藤 譲
7.GLP-1受容体作動薬/宮川潤一郎 他
8.インスリン/田中 逸 他
III.糖尿病性血管障害の薬物療法
1.糖尿病網膜症/柴 友明
2.糖尿病性腎症/羽田勝計 他
3.糖尿病性神経障害/中村二郎
IV.動脈硬化症発症阻止,進展阻止の薬物療法
1.高血圧の薬物療法/伊藤貞嘉 他
2.脂質異常症の薬物療法/下村伊一郎 他
3.抗血小板薬/島田 朗 他
☆索引あり
|