|
|
透析スタッフ 11月号 |
|
13年10月10日発売
A4変型判 128頁
価格:本体1,886円+税
ISBNコード:978-4-287-75002-5
全ページカラー印刷 |
|
特集●透析ナースが知っておきたい 心臓の仕組みと心電図の読みかた
|
企画編集/杉 薫
|
|
|
|
画像をクリックするとサンプルをご覧いただけます |
|
|
|
|
透析がはじまると,それまで何でもなかった患者が,脈が飛ぶ,胸が気持ち悪いなどの症状を訴えることがあります。脈をとると1拍抜けているのであれば,おおよそは期外収縮と思われますが,確証はありません。そこで,透析中でも心電図をとって当日担当の先生に診てもらうことになります。そんなときに,心電図が読めて,処置や治療が必要かどうか判断できたら,どんなに楽だろうと思う看護師さんたちは多いのではないでしょうか。透析による除水,電解質の変化,自律神経活性を含めたその他の多くの因子の変化のために心臓が電気的に不安定になって不整脈が出るのではないかと推察しますが,実態はもっと複雑かもしれません。透析を受けている慢性腎不全の患者は,全身の動脈硬化が同年代の方々よりも進んでいるというデータは多いようです。当然,冠動脈硬化および狭窄を生じている患者も多いことになります。とくに糖尿病性腎症から腎不全になった患者の冠動脈病変は無症状のうちに進みます。このために,致死的な心室不整脈が生じやすい基質があると考えておいた方がよいのです。致死的な心室不整脈が生じる前に,そのような患者の心電図の特徴を捉えておけば,定期的な心電図検査のときに心電図波形をみる際の参考になります。
透析を行いながら外来診療を行っているクリニックや透析専門のクリニックでも,心電図をとるのは大抵看護師さんでしょう。だから最初に心電図を目にするのは看護師さんたちです。でも,心電図は苦手で嫌い,という看護師さんは多いかもしれません。そこで簡単な心電図の習得法を教えます。特徴的な波形を覚えてしまうことです。暗記ではありません。心電図でよく出てくる異常はある程度決まっています。だからそれだけ覚えてしまうのです。あとは医師だって判断に困るものばかりです。
まず,右脚ブロック(処置は不要です)。V1誘導の特徴ある波形に慣れてください。次に期外収縮。正常心拍のQRS波と同じでP波が前にあれば心房期外収縮。QRS幅が広くてまわりにあるQRS波形と違っていてP波が前になかったら心室期外収縮です。どちらも頻拍の引き金にならなければ様子見です。期外収縮が多く出てきたら,透析担当の医師に診てもらえばよいのです。次に多いのは心房細動です。QRS波とQRS波の間隔がまったく不規則で,P波がどれだかわからないことで診断できます。この波形さえ覚えてしまえば心配はいりません。しかし心房細動が透析中の最も厄介な不整脈になります。症状を訴えますので,心拍数調節のためにワソラン®などが投与されます。すると透析中の血圧が低下して,それほど脈は遅くなりません。心房細動があると脳卒中にならないだろうかなどと考えてしまいます。早くもとの正常心拍に戻らないかなと祈りたくもなります。最後に透析患者に特有な心電図変化は,血清カリウム値の変化に伴う心電図波形です。カリウム値が高いとテント状のT波,徐脈とP波の消失,もっと危なくなるとサインカーブ状の心電図です。カリウム値が低いとQT間隔が延長してT波が大きく陰転します。この電解質に関連した心電図変化があったら,すぐ医師に報告してください。その他の心電図異常は当日担当の医師に相談すればよいのです。
どうです?心電図は簡単でしょう?心電図を飲み込んで慣れてください。この特集が皆さんのお役に立つことを祈っています。
杉 薫
東邦大学医療センター大橋病院 院長,循環器内科 教授
|
|
|
|
特集
1. 心臓の解剖と生理(心房・心室と血行動態)/鈴木真事
2. 心臓の刺激伝道系と心臓の興奮/円城寺由久
3. 心電図の基礎:波形の特徴と正常洞調律/野呂眞人
4. 左心系の負荷と右心系の負荷の心電図/諸井雅男
5. 虚血と梗塞の心電図/溝渕正寛,中村 茂
6. 電解質異常の心電図/笠尾昌史
7. 徐脈性不整脈/近藤直樹
8. 上室頻脈性不整脈/酒井 毅
9. 心室頻脈性不整脈/熊谷賢太
10. 透析中の不整脈/相川 丞
11. 透析患者のペースメーカと心臓再同期療法/高見光央
12. 透析患者の心臓突然死に注意する心電図所見/阿部敦子,池田隆徳
|