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透析スタッフ 2014年第2号
14年2月10日発売
A4変型判 96頁
価格:本体1,886円+税
ISBNコード:978-4-287-75004-9
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特集透析患者の褥瘡ケア・フットケア,そして出口部ケア
−創傷治癒のメカニズムから−

企画編集/中元秀友,市岡 滋
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 日本の人口構成の急激な高齢化に伴い,透析患者の高齢化は大きな社会問題となっています。2009年の日本透析医学会の統計調査によれば,これら透析患者のうち約5%が終日臥床状態であることが報告されており,その大半の患者は入院透析患者です。多くの高齢入院患者はADLが不良であり,介護の必要な患者です。また在宅の高齢透析患者も多くの合併症を有しており,介護が必要な患者です。
 日本の透析患者の44%は糖尿病性腎症からの透析導入であり,糖尿病性腎症患者では末梢循環不全から四肢の壊疽を合併し,四肢の切断を余儀なくされる事例を経験します。これらADLの不良な透析患者や糖尿病を合併した透析患者では,高率に褥瘡を合併し,褥瘡感染から状態が悪化し予後不良となることがみられます。褥瘡の管理,そしてフットケアは高齢透析患者の予後を左右する,大切なケアのポイントです。
 これからの透析医療では,NST(栄養サポートチーム)と同様に,医師,看護師,栄養士,薬剤師などを含めたチーム医療,とくに医療連携が重要です。しかしながら現在の高齢者入院施設の状況は,介護にその重点を置いていますが褥瘡やフットケアに十分な時間を割くことは極めて困難です。高齢者の介護に十分慣れている介護施設においても,十分な管理や治療が行われているとは言えません。さらに褥瘡,足潰瘍を発症させてしまったときに,十分な加療を行ってくれる医療施設は皆無に近い状況です。透析患者の褥瘡,足潰瘍などの治療可能な医療機関が限られている現状のなかでは,透析施設こそがこの責務を負うべき重要な施設になります。透析スタッフの役割は,褥瘡,フットケア,そして出口部ケアにおいて大変重要なのです。
 さて,「創傷治癒のメカニズム」の観点からすると,褥瘡の治癒,壊疽の治癒,さらに出口部感染の発症,進展,さらに治癒は同じ経過をたどります。いずれも創傷治癒を機転と考えれば,同じケアならびに治療指針で加療が行えます。今回の特集では,創傷治癒の第一人者である埼玉医科大学形成外科の市岡教授と,創傷治癒の観点から,透析患者の褥瘡,フットケア,さらに出口部ケアを考える特集としました。
 高齢透析患者や糖尿病合併透析患者で問題となる褥瘡とフットケア,さらに出口部ケアに的を絞り,予防,診断,管理,そして治療のポイントを,その道の第一人者に詳しく,そしてわかりやすく述べていただきます。褥瘡ケア,フットケア,そして出口部ケアの最先端の考え方も含めて,透析医療従事者にとって知っておくべき重要なポイントが詰め込まれています。
 この特集が高齢者透析患者管理の一助となる事を願っています。
中元秀友
埼玉医科大学総合診療内科 教授
特集
1. 褥瘡ケアにおけるチーム医療とスタッフ教育の重要性/勝部真弓ほか
2. 透析患者の創傷アセスメント/松岡美木
3. 透析患者における壊疽,褥瘡の原因と対策/新城孝道
4. 透析患者における褥瘡ケアと出口部ケアのポイントは?/野口かおりほか
5. 腹膜透析患者における出口部ケアのポイント−創傷ケアを基にした出口部感染の治療−/中元秀友
6. 創傷診療の基本/松崎恭一
7. 外用剤と抗生物質の選び方/野田幸一
8. 創傷を合併した透析患者の栄養管理/石川昌一ほか
9. 透析患者における褥瘡ケア・フットケアの注意点/水内恵子ほか
10. 透析スタッフが診るべきポイント/田丸裕子
11. 再発予防,フットウェアの重要性/犬塚俊裕
12. 透析施設で創傷診療を行うことのメリット/野末睦
13. 診療報酬からみた褥瘡とフットケアの歴史/桑原靖ほか