医師として研修を始めたあなた。まさか，先輩の診療を見学しているだけのような研修はされていませんよね。見学だけの研修では決して医師としての実力はつきません。実力をつけるには，現実の患者さんと真正面から向き合う経験が欠かせません。
　そうはいっても，あなたはまだ医師として初心者。ときとして自分の力のなさのために，とても怖い状況に陥ることもあるでしょう。まさにあなたのピンチ。頭がカッーとして，喉が渇き，胸がドキドキして，汗がどっと出るようなピンチです。
　初心者でもあなたは医師。逃げたくてもそのピンチから逃げるわけにはいきません。そして，ピンチの経験ほどあなたを成長させる経験はないのです。「どうしたらいいんだろう!?」と必死になって考え行動したことは，あなたを支える一生の財産になります。
　でも，あなた1人ですべてに対処しようとしてはいけません。先輩に助けを求めることもあなたの仕事です。あなたなりに考え行動して，先輩から十分にフィードバックを受けることが重要なのです。それでこそあなたは成長できます。何よりも患者さんを救うことができます。
　本書にはピンチに陥っている研修医が登場します。その研修医はあなたそのものです。そこにチーレジが登場し，ピンチに陥っているあなたを救出します。そしてあなたはまた挑戦するのです。どうぞ，その物語を追体験してください。「厳しい現実に直面する ⇒ 考え悩む ⇒ 反省する ⇒ フィードバックを受ける ⇒ 再挑戦する」ーこのサイクルこそが，あなたを本当に成長させてくれます。

　本書『ピンチの研修医1』は12のテーマからなっています。「ショック」，「発熱」，「胸部単純写真の読み方」，「関節痛」，「急性腎障害と体液評価」，「胸痛」，「けいれん」，「栄養療法」，「急性腹症」，「血糖コントロール」，「失神」，「海外帰りの発熱」です。一番気になるところから読みはじめてください。
　執筆者は，夏本文輝，松尾貴公，岡本武士，北田彩子の4名。執筆時，彼らはまだ卒後4〜5年目ですが，みんな“花の”チーレジ経験者です。
　ピンチに陥ったあなたにとって彼らほど頼りになる存在はいないでしょう。あなたと数年しか違わない彼らは，「あなたは何がわからないのか，どう説明すればよいのか」を知り尽くし，目の前で見事なパフォーマンスをみせてくれますから。

　最後に，本書が生まれる豊かな土壌を作ってこられた当院先輩レジデントとスタッフのみなさま，前シリーズからずっとお世話になっている医学出版の月岡春奈さまに，この場をお借りして心から感謝申し上げます。