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BRAIN 2013年第5号(September & October 2013)
13年8月15日発売
A4変型判
価格:本体¥2000+税
ISBNコード:978-4-287-85019-0
全ページカラー印刷

特集よりよい看護につなげよう! よくわかる脳血管内治療

企画編集/大石英則
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 脳血管内治療とは,カテーテルと呼ばれる直径数mmの細い管を体表近くにある太い血管(大腿動脈や上腕動脈)などを通じて脳や頚の血管に挿入し,血管の内側から病気を治療する方法です。この治療法により,開頭手術などが難しい深部病変や全身麻酔リスクが高い患者さんも治療が受けられるようになってきました。
 方法を大きく分類すると,“病的血管自体やその一部を閉塞する方法”と“狭窄・閉塞した血管を拡張・再開通する方法”とに分けられます。対象疾患には,脳動脈瘤,脳脊髄動静脈奇形,硬膜動静脈瘻,頭頚部腫瘍,頚動脈狭窄症,椎骨鎖骨下動脈狭窄症,頭蓋内動脈狭窄症,急性期脳梗塞などがあります。
 血管撮影装置・カテーテル・コイル・ステントなど医療機器の開発進歩に伴って,脳血管内治療の有効性がますます高まってきて,日進月歩の感があります。近年では,くも膜下出血の患者さんに対するコイリング術の治療成績がクリッピング術と比べて良好であることや,頚動脈狭窄症に対するステント留置術が内膜剥離術と同等の治療成績であることなどが報告されていて,これら疾患の治療法を決定するうえで重要な選択肢となっています。
 脳血管内治療は低侵襲医療ですから,“体にメスを入れない・出血が少ない・傷跡が残らない・痛みが少ない・頭髪の剃毛が要らない・入院期間が短い”など,体に優しい「切らない手術」として,患者さんにとっては大変魅力的です。ただ注意していただきたいのは,「低侵襲医療だから安全性が高い」わけではないということです。診断を目的とする脳血管撮影と同じ血管撮影装置でカテーテルやガイドワイヤーを使うため,脳血管撮影の延長線上にあるように思われがちですが,まったく異なる手技であると考えてください。
 異物を血管のなかに挿入・留置するので,患者さんを管理するうえで「切る手術」と異なる点が多々あります。たとえば,開頭術では血液を固まりにくくする薬(抗血小板剤や抗凝固剤)は中止や休薬をしますが,脳血管内治療では脳梗塞予防ために治療前後に投与することも多くあります。また,造影剤を使いますから腎臓への負担も考慮して尿量をチェックする必要があります。脳血管内治療でも,適切な看護こそが患者さんに無事退院してもらうために大切なのです。
 この特集では脳血管内治療のエキスパートの先生方に,セットアップ,治療に用いる医療機器,代表疾患とその治療法,放射線被ばくなどについて,わかりやすく解説をしていただきます。この特集を読まれた皆さんが脳血管内治療をよく理解していただき,よりよい看護ができるようにお役に立てれば幸いです。
大石英則
(順天堂大学大学院医学研究科 脳神経血管内治療学講座 教授)
特集
1. [特集にあたって]脳血管内治療とは/大石英則
2. セットアップ/中居康展
3. 使用する機器/今村博敏,坂井信幸
4. 脳動脈瘤コイル塞栓術/山本宗孝,大石英則
5. 頚動脈ステント留置術/小林英一
6. 脳動静脈奇形/上村昭博,新見康成
7. 硬膜動静脈瘻/平松匡文,杉生憲志
8. 急性脳血管閉塞/松原俊二
9. 頭蓋内動脈狭窄症/近藤竜史,松本康史
10. (術前・術後)周術期管理/松本博之
11. 放射線被ばくの問題/森谷淳二,掛田伸吾,興梠征典

連載
・ニューロナースの疑問に答える! 脳神経疾患画像診断レクチャー
 第17回 外傷① 急性硬膜下血腫/急性硬膜外血腫/慢性硬膜下血腫
 執筆●本谷啓太 企画●土屋一洋
・エッセイ●こころとからだ
 第12回 不眠と心の問題
 内田 都
・主要症例で学ぶ ナースが知りたい! 脳神経外科疾患の病態・治療・術後ケア
 第18回 定位放射線治療(ラジオサージェリー)
 執筆●鎌田健作 企画●林 健太郎