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MEDICINAL12月号
MEDICINAL12月号

A4変型判112頁
価格:本体¥2,500+税
ISBNコード:978-4-287-84003-0
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特集心血管危険因子-生活習慣病の観点から-

企画編集/山科 章
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目次 特集 特集 特集
 一向に減らない循環器疾患対策として,厚生労働省は2000年に健康日本21を策定し,心血管病の原因である生活習慣の改善による1次予防に重点的な対策を講じた.食生活・栄養,身体活動・運動,休養・心の健康づくり,タバコ,アルコール,歯の健康,糖尿病,循環器病,がんの9つの分野について,2010年を目途に具体的な数値目標を設定し,具体的な対策を立てた.
 疫学調査結果の検討から,脳卒中発症の危険因子を,(1)高血圧,(2)喫煙,(3)耐糖能異常,(4)多量飲酒,虚血性心疾患の危険因子を(1)高血圧,(2)喫煙,(3)高脂血症,として循環器疾患予防対策を講じた.それぞれの危険因子について方略を提示し,疫学データに基づいて,それぞれの危険因子の低下による著しい成果を予測した.しかし,2009年の実態調査をみる限り,循環器疾患の疾病発生率は一向に改善しなかった.死亡者数をみても,脳卒中による死亡者数は年間13万7819人が12万9055人,虚血性心疾患死亡者数は7万2290人が7万1285人とほとんど減少しなかった.治療,救命率の進歩を考えると発病患者数は増加していると考えられる.
 成果がえられなかった理由はさまざまに説明されているが,行政と現場の一体になった取組み,さらには広く国民が健康あるいは予防に関心をもって行動するための方策が立てられなかったことに理由があるように思う.健康日本21が掲げる“健康に関するすべての関係機関・団体等と国民が一体となって健康づくり運動を総合的・効果的に推進し,国民各層の自由な意思決定に基づく健康づくりへの意識の向上と取組みを促します.”が,実践できなかったからである.アドバルーンを上げても現場が理解し行動しなければ成果はえられないのである.大げさな言い方かもしれないが,国民の健康の第1の担い手である医師が予防医療を理解し,実践して初めて成果がえられると筆者は考えている.第一線の現場で働く医師がコメディカルを含むすべての医療関係者と共同し,行政の力を借りて,患者あるいは住民の行動を変容させなければならないと思っている.
 その一環となるべく,MEDICINAL(メディシーナル)の読者対象である第一線の先生方が,“生活習慣病の観点からみた心血管危険因子”について学べるよう本特集を企画した.本特集では,古典的危険因子に加えて,塩分摂取,高心拍,耐糖能異常,高尿酸血症,内臓脂肪型肥満,睡眠時無呼吸,うつ・メンタルストレス,運動不足,アルコール,歯周病など,比較的最近になって注目されている危険因子もとりあげた.それぞれの危険因子については,心血管疾患における疫学,心血管危険因子となるメカニズム,現状と対策,さらに,今後の課題などについて,各分野のオピニオンリーダーに記述していただいた.本特集は,多面的に心血管疾患を予防するための方略が学べる充実した内容となっている.ぜひ,読者の皆さんには読み込んでいただきたい.
 最後に,多忙にもかかわらず,主旨を理解いただき,きわめて内容に富んだ寄稿をいただいた執筆者の先生方に対して,この場を借りて深謝したい.
山科 章
(東京医科大学 内科学第二講座(循環器内科)主任教授)
特集
1.正常高値高血圧-減塩の努力と自己管理-/久代登志男
2.高心拍-バイオマーカーとしての心拍数-/山科 章
3.耐糖能異常/斎藤重幸
4.脂質異常症/宮内克己
5.高尿酸血症/久留一郎
6.内臓脂肪型肥満/桝田 出
7.睡眠時無呼吸/高田佳史
8.うつ・メンタルストレス・不眠/飯田俊穂
9.運動不足/井上 茂
10.歯周病/山崎和久
11.喫煙/中村正和
12.飲酒・アルコール/河野雄平