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MEDICINAL 2012年4月号 |
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2012年3月26日発売
A4変型判/144頁 価格:本体2,500円+税
ISBNコード:978-4-287-84007-8
全ページカラー印刷
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企画編集/菅野健太郎 |
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生活習慣,なかでも食事,アルコールなどの嗜好品は,消化管に直接影響するのみならず,長期に及ぶカロリー過剰摂取は肥満とそれに伴う疾病のリスクを高めることが知られている.いわゆるメタボリックシンドローム(metabolic syndrome;MS)は,主に糖尿病(diabetes mellitus;DM)や脂質異常症,動脈硬化に起因する疾患のリスクを高めると一般に認識されているが,医師の間でもMSが多くの消化器疾患のリスク要因となっていることは案外知られていない.MSやDM患者で,消化器内科医が最も注意すべきなのは,癌のリスクが高くなることである.すなわち,MS,DM患者に対しては,前癌状態としての大腸ポリープも含めた大腸癌,肝硬変や肝癌,膵癌,胆嚢癌のハイリスクグループと考えて,年齢を考慮してスクリーニングを行うよう心がける必要がある.
肥満と関連する代表的な消化器疾患としては,逆流性食道炎,脂肪肝・脂肪性肝炎(NAFLD,NASH)が挙げられる.これらの疾患の罹患率は高く,食事指導,生活指導(運動を含む)は,最初に行うべき重要な治療法となる.最近,小規模ながらNASHに対して有効性を示す薬剤も知られてきており,今後食事指導,生活指導で対応が困難な患者に対して,薬剤治療を選択する必要性が出てくると思われる.肥満・DMはNASHからの肝硬変や肝癌発生のみならず,ウイルス性肝炎からの肝硬変や肝癌への進展にも悪影響を及ぼすことが知られている.一方これらの肝疾患では糖代謝異常を示す患者の割合が著しく高い.代謝の中心臓器である肝臓では,食事を含む栄養代謝についての総合的な知識と,それを考慮した治療戦略が重要となる.翻って考えると,MSの中心的概念となっている,いわゆる内臓肥満は腹膜組織への脂肪蓄積症であり,すなわち消化器病学のとりあつかうべき臓器である腹膜疾患であるといっても過言ではない.
食事習慣の問題は,炎症性腸疾患,大腸憩室疾患などにも大きな影響を与えると考えられる.これらの下部消化管疾患のみならず,肥満症には,腸内細菌が大きな影響を与えると考えられるので,今後は単に食事のみならず腸内細菌の構成とそのエネルギー産生能についても総合的に考えていく必要があると思われる.
機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorder;FGID)は,過去の生活史,生活環境,生活習慣など,個人の持つ感受性と相まって消化器症状を呈する多彩な症候群を包含し,軽症のものを含めると日本人の20%程度はなんらかのFGID症状を有しながら生活していると考えられる.これらの疾患群については,病歴聴取,生活指導を丹念に行う必要がある.最近困難な臨床試験で有効性が証明されている薬剤も開発されつつあるので,FGID治療における薬剤治療の位置づけについてもよく知っておく必要性がある.
本特集では,さらに最近臨床に導入されてきた栄養・代謝制御薬(吸収抑制薬,消化管ホルモン制御薬など)についても触れることとした.最近話題のGLP-1関連薬は,消化管運動にも影響を及ぼす可能性があり,消化器内科医も十分に知識を備えておくことが望ましい.また,GLP-2アナログ,グレリン関連薬など,新たな消化管ホルモン関連薬も,今後臨床導入が期待されている.
このように,消化器は栄養代謝制御の中心臓器であり,それゆえ消化器疾患は生活習慣と最も密接にかかわっている.本特集が,この両者の関連性について読者により深い理解を与える契機となれば幸いである.
菅野健太郎
(自治医科大学医学部 内科学講座 主任教授,附属病院病院長,日本消化器病学会 理事長,本誌編集委員)
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特集:生活習慣と消化器疾患・治療薬
1.逆流性食道炎/藤本一眞 他
2.消化性潰瘍/樋口和秀 他
3.炎症性腸疾患/中島 淳 他
4.大腸憩室疾患/松橋信行
5.大腸ポリープ,大腸癌/高山哲治 他
6.胆石症,胆嚢癌/田妻 進
7.慢性膵炎,膵癌/下瀬川 徹
8.脂肪肝,脂肪性肝炎(NAFLD, NASH)/山本和秀 他
9.肝硬変,肝癌/渡辺純夫 他
10.内臓肥満/恩地森一 他
11.機能性消化管障害/三輪洋人
12.消化管栄養吸収制御薬:Nutraceuticalsも含めて/菅野健太郎
13.Probiotics, Prebioticsと疾患制御/大草敏史
14.消化管ホルモン作動薬の臨床応用/中里雅光 他
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