HOME雑誌MEDICINAL > MEDICINAL12年6月号
MEDICINAL4月号
MEDICINAL 2012年6月号

2012年5月25日発売
A4変型判/152頁
価格:本体2,500円+税
ISBNコード:978-4-287-84009-2
全ページカラー印刷

特集配合薬時代の降圧薬療法の進め方

企画編集/楽木宏実
画像をクリックするとサンプル(PDF)をご覧いただけます
目次 特集 特集 特集
 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(angiotensin II receptor blocker;ARB)に続くレニン阻害薬の登場で降圧薬の種類は出揃った感があったが,そのあとに次々と登場した配合薬は,実際の臨床において降圧薬の選択に大きな変革をもたらした.2剤併用からの切り替えでもさらに降圧する症例を実感した読者も少なくないと思う.まさに配合薬が服薬アドヒアランス改善に貢献した結果といえる.服薬アドヒアランス改善は心血管疾患発症予後にも影響することが示されており,配合薬による降圧療法の推進は,今後も続くと考えられる.降圧薬だけでなく,糖尿病治療薬に関する配合薬も多数登場し,降圧薬と脂質異常症改善薬の配合薬も使用可能となっている.まさに,「配合薬時代」になった感がある.2011年8月11日号のN Engl J Med(365: 488-91)には,「配合薬の虚偽・害悪・希望」と題した論説が掲載された.配合薬全般にわたり,過去の事例や現在の状況から推定される問題点を挙げたうえで,リスクとベネフィットを的確に評価していくことの重要性がまとめられている.降圧薬の合剤の場合は,併用療法として効果が確認されている組み合わせで配合薬を作製しているため,ベネフィットの方が大きいと考えられるが,科学的に評価し続けることはたしかに重要である.実際,多数の配合薬が登場したことで治療の幅が広がったが,配合薬選択の根拠をどう考えるべきかの課題はそれほど簡単ではない.本特集では,このような背景の中で配合薬の使用をどのようにするかを多角的に解説していただいた.
 さて,日本における降圧薬領域での配合薬の歴史は,最近次々と登場したARBとの配合薬に始まるものではない.過去には,ベハイドRA(R)(レセルピン+ベンチルヒドロクロロチアジド+カルバゾクロム)やエシドライ(R)(レセルピン+塩酸ヒドララジン)といったものがあった.ただし,これらはレセルピンに代わる降圧薬の登場とともにほとんど使用されなくなった.海外では,利尿薬とβ遮断薬の配合薬が古くから使われており,アンジオテンシン変換酵素阻害薬と利尿薬やカルシウム拮抗薬との配合薬もある.最近では,その他にも多数の組み合わせの配合薬が一般臨床使用可能である.まだまだ日本における配合薬の選択肢は少ないのかもしれない.海外でのガイドラインでの位置づけを含め,今後期待されるべき配合薬についても解説していただいた.その中には,降圧薬どうしの配合薬だけでなく,他の疾患に対する薬剤との配合薬や,アスピリン+スタチン+降圧薬といった心血管疾患予防薬の位置づけで開発されている“ポリピル”もある.
 さらに,実地臨床において最も知りたいことは,さまざまなARBと利尿薬やカルシウム拮抗薬との配合薬についての具体的な使用法と考える.第1は,併用療法との違いであり,それぞれにメリット・デメリットがある.また,配合薬の薬理学的な効果や臨床での長期的な降圧効果に加えて,心血管疾患発症に与える影響についてのエビデンスも重要である.単純に配合薬を用いたものだけではないが,この数年で併用療法に関するエビデンスが複数報告され,新たな視点での降圧薬選択が提示されている.もちろん合併症の種類による配合薬選択も重要なポイントである.本特集が,これらの臨床面での疑問に答える一助になれば幸いである.
楽木宏実
(大阪大学大学院 医学系研究科 内科学講座 老年・腎臓内科学 教授)
特集:配合薬時代の降圧薬療法の進め方
1.各国のガイドラインにおける配合薬の位置づけ/梅村 敏 他
2.世界の配合薬/石光俊彦 他
3.併用療法の基本と配合薬を考慮した第1選択薬のあり方/檜垣實男 他
4.降圧薬併用療法と単剤増量療法を比較した臨床研究/光山勝慶
5.配合薬と服薬アドヒアランス/大屋祐輔 他
6.配合薬の医療経済効果/齊藤郁夫
7.ARB+利尿薬の特徴と種類による使い分け/平田恭信
8.ARB+カルシウム拮抗薬の特徴と種類による使い分け/長谷部直幸 他
9.カルシウム拮抗薬+スタチンの用い方/吉田雅幸 他
10.RA系阻害薬+カルシウム拮抗薬+利尿薬は必要か/土橋卓也
11.糖尿病治療薬領域での配合薬/伊藤 裕 他
12.ポリピルへの期待/河野雄平 他
13.降圧薬の併用療法に関するエビデンス:ASCOT-BPLA/苅尾七臣 他
14.降圧薬の併用療法に関するエビデンス:ACCOMPLISHとGUARD/伊藤貞嘉
15.降圧薬の併用療法に関するエビデンス:COPE Trial/梅本誠治
16.降圧薬の併用療法に関するエビデンス:COLM/荻原俊男
17.糖尿病合併高血圧患者における配合薬の使用法/島本和明
18.慢性腎臓病合併高血圧患者における配合薬の使用法/柏原直樹
19.心疾患合併高血圧患者における配合薬の使用法/今泉 勉 他
20.脳卒中合併高血圧患者における配合薬の使用法/島田和幸 他
21.高齢者高血圧における配合薬の使用法/小原克彦


連載
・聞きたい!気になる新薬
企画:北田 光一
第3回:アルツハイマー型認知症治療薬
「リバスチグミンパッチ 4.5 mg,9 mg,13.5 mg,18 mg」/木村真春